独自性の追求と気仙大工の心意気建物の恰好良さの基準は何処にあるのだろうか。既に評価の定着した木割をもって造れば画一的な建造物になってしまう。ひとの心は常に新しいもの、他人とは一味違った「個性あるもの」を追求する。封建時代の押し縮められた制約の中でさえ、外見は「隣並み」であっても軸組みの構造や内部の造作は同じものなど殆ど無い。職人の誇りがそれを許さないのだ。気仙大工の見どころは「独自性の追求」にある。そして何時の日にか良い仕事をさせてもらえる施主に巡り逢える日を夢見て鑿(のみ)を研ぎ、待つ。そしてついに巡り来た待望の仕事に出会ったとき、水を得た魚が躍動するように「あれもやりたい、この細工も生かしたい」と贅沢な悩み心を味わうこととなる。良材を得て意匠案を練り、墨付けして木を刻む楽しさは大工だけに与えられた特権。ここに匠の里ならでは見られない優れた作品が生まれる。
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